駄犬、家を買う

一度人生投げた俺が居場所を手に入れるまでの話

大黒本しめじが好き

タイトルの通り。大黒本しめじが大好きです。
いやぁ、これ。豚バラで巻いてバター醤油で焼くと、めっちゃめちゃうまい。
今日は、好きすぎるこのきのこについて話そうと思う。

このしめじ、スーパーで良く見かけるブナシメジとは全然違う。調べてみると、全然品種が違うらしい。
一本が大きくて、とっくり型をしている。茶色のかわいい丸い傘に、白くてふっくらとした軸。もう、かわいい。マジで、かわいい。ああああああああ、かわいい。
 どうやら、その姿が大黒様に見えるってんで、『大黒本しめじ』と呼ばれるようになったらしい。俺は、キノコを見るとエイゴリアンを思い出す。あの絵、シュールで好きだったなぁ。
 
 香り松茸、味じめじ。よく、こうやって言われているが、どうやらこの”しめじ”は、”本しめじ”のことを指すようだ。本しめじには、うまみ成分が他のしめじと比べて多く含まれている様子。

 俺は、大黒本しめじを大人になるまで知らなかった。人工栽培が難しく、昔は一般には出回ることが少なかったようだ。高級料亭などでしかお目にかかれない代物だったらしい。そりゃあ、知らないのも納得だ。希少価値の高い、珍品のキノコだった。
 最近は、栽培技術が進んで通年販売ができるようになったということで、自分のとこの最寄りのスーパーでも出回るようになったらしい。技術の進歩のすばらしさ。本当にありがたや。

 お味は、癖がなく。うまみ成分が多く含まれるということもあり、焼くとジューシーで嚙んだときに滴るキノコの汁がなんとも言えないうまさ。ああ、食べたい。お勧めの食べ方は、先ほども言ったように、キノコに豚バラを巻いてバター醤油で焼くという。是非試してほしい。もちろん、キノコ単体で焼いてもうまいのだが。

大黒本しめじ布教のために、体にいい点をまとめておく…

カリウムが豊富(高血圧の予防、利尿作用、疲労回復に役立つらしい)
・ビタミンB₁(疲労回復にいいらしい)
・ビタミンB₂(細胞の新陳代謝の促進、皮膚や粘膜の機能維持や成長に役立つらしい)
ナイアシン(皮膚や粘膜の健康維持、脳神経を正常に働かせるらしい)
・パントラテン酸(動脈硬化を予防、ストレスを和らげるらしい)
葉酸(貧血の予防、新しい赤血球を作るのに欠かせないらしい)
・カルシウム、リン、マグネシウム(骨や歯を構成するのに必要なミネラル)
エルゴステロール(不溶性食物繊維の一種B₋グルカン)
シジミの6倍のオルニチン(肝臓の働きを助けるらしい)

 エルゴステロールに関しては、気になるのでまた別に記事を書くことにする。シジミの6倍のオルニチンだと?酒を飲む前に是非いただきたい奴じゃないか。どうでもいい話だが、シジミとシメジって似てるよな。

 食欲の秋。味覚の秋。キノコ大好き。ああああ、キノコ大好き。ということで、大黒本しめじの話を熱く語ったわけだが。本当に、このこは癖のないキノコなので、キノコの香りが苦手だって人にもおすすめできるキノコだと思っている。キノコ嫌いで、キノコに挑戦しようという猛者はなかなかいないだろうが、是非興味があったら試してみてほしい。マジうまいから。

ちなみに、俺んちの近所のスーパーに売っとったのは下の、パックに詰まった奴だ。

落ちのない怖い話『牛丼屋』

某牛丼屋に牛丼を買いに行った時のことだ。
牛丼を数人分テイクアウトするべく、俺は店内に入っていった。テイクアウト専用のレジにて、牛丼を注文し、お金を支払った。『少々かけてお待ちくださいね。』従業員のお姉さんが、ニコニコといった。ここのお姉さん、とてもいいひとそうなので好きだった。今はあんまり見かけない。まあ、昼間に行くことが少なくなったからな。時間が合わないだけかもしれない。

お姉さんに言われた俺は、椅子に座った。牛丼が出来上がるまで携帯の画面をぼんやり眺めながら、椅子に座っていた。

ーカランー

ーコン…コン…コンー

何か、硬いものが床に落ちて転がるような音がしたので、びっくりしてそちらを見た。すると、床に水が入っていたプラスチックのコップが一つ…。
 食べ終わったお客さんは少し前に出ていって、そこには俺とお姉さんと厨房の方にもう一人いるだけだったので、それにお姉さん忙しそうだったので、俺はコップを拾いに向かった。
 俺がコップを拾って机の上に戻すと、お姉さんが『すいません!』っといって、慌てて出てきた。

コロナウイルスの流行前の話なので、窓やドアが換気のために開いていたということはなかったし、席の方には俺以外誰もいなかった。おかしなことに、コップが床に落ちる要因が見つからないのだ。

俺は椅子に戻って、なんで落ちたのかを考えたが、原因は思いつかなかった。

しばらくして、牛丼が出来上がったようでお姉さんに呼ばれた。
『先ほどはありがとうございました;』
『いえいえ』
『…たまに、落っこちるんですよね;』

 お姉さんは牛丼の入った袋を俺に渡しながらそう言った。『そうなんですか;』どう返していいかわからなくて、しょうもない返事をしてしまったが。
 どうやら、誰も居ないのにコップが落ちることはよくあるようだった。

 そのまま、牛丼をもらって帰って…その後コップが落ちる現象がどうなったかわからないので、この話には落ちがない。

 この話をかいていて思い出したことがある。そういえば…俺が居酒屋の厨房でバイトしていた時も似たようなことがあったんだよな…。その話は、また今度することにしようと思う。

『永遠と一日』を聴いて考えたこと

※この記事は、歌詞の本来の意味や、作者さんがどう考えて作ったかなど。ガン無視で、自分が聴いて考えたことの話をしているので、最初にそこの所をご了承ください。

きいたことが無い方は、是非一度聞いてみてほしい。

まず初めに”永遠を君は笑った”と出てくる。
そしてすぐに”永遠は君を攫った”と出てくる。
もう、最初の曲調からして俺少し泣きそうなのに、『あぁ、これ亡くなった奴じゃんかぁぁぁぁ』もう、ここですでに泣かせにかかってくる。不思議なのは、おそらくは愛する人が亡くなったであろう唄なのに。全く絶望していないところなのだ。俺だったら、後を追うんや!君と同じ所に今すぐ行くんだ!って、絶対なると思うんすよ。おそらく。
 じゃあ、この明るい感じって何だろう?って、ここ数日ずっと考えていたんですね。何回も繰り返し聞きいた。
 ”永遠は君を攫った”っていう歌詞の後に、”でも行く先はもう決めた”っていう歌詞が来るんだよな。これで言うところの自分ってのは、悲しんでいないわけじゃないんだけれども。悲しみに暮れてその場所から動かないことは、何にも生み出さない。悲しみだけが募っていくのだと、知っている人なんだなぁなんて考えた。
 人間はいつしか朽ちて、みんな同じ場所に行くわけですが。俺は、この”行く先はもう決めた”っていうのに、意志を感じたんだよな。生きていく意志といいますか。その、行く先にたどり着くまでの道のりを、全うするという決意を、感じる気がする。勝手な解釈ですが。

 ”魚で溢れた日々の 後先 振り返るな 君をえがいた"と、後に続くんですが。これがまた泣けてくる。魚で溢れた日々ってなんだ?って、考えたときにルノルマンカードの解釈がピタッとはまりまして。ルノルマンだと『魚』=『豊かさ、価値』などを表すらしいんだ。俺の解釈だと『魚で溢れた日々』=『君と過ごした豊かさで溢れた日々』になるんすよね。んで、『後先振り返るな』で、その日々を振り返って立ち止まるなって自分に言い聞かせながら、『君をえがいた』だから、きっとここで過去の思い出に浸って立ち止まるよりも、過去の思い出を胸にまた君に会えることを思って進んでいくよって、この人は思ってるんじゃねぇかな。なんて結論に至った。

勝手な解釈をしているわけだけれども。
もう、切なくなって泣いた。
更に言えば、”永遠を君を笑った 行く先を指さして”とあるので。君も永遠に攫われてしまうことを悟っていたのかなと思った。死が怖くないといったら、少々小難しい話になってしまうかもしれないが、君というのが死というものを、『怖くない、少しの間生きる場所が違うから会えなくなるけれど、あなたがこっちに来る”その時”がきたら、会えるもの』と解釈しているのなら、永遠を君は笑うかもしれないなぁと腑に落ちたのだ。

以上、全ては俺の妄想なのだが。この妄想を俺にさせるこの曲って素晴らしくない?!と、そういいたい。

んで、ここにたどり着く過程で色々と気が付いたことがあるんだけれども。

歌詞の中で『死』とか『悲しみ』とか『希望』とか『豊かさ』だとか、どれ一つとしてダイレクトに言っていることってないんだよな。そこから、ああ。愛って言葉要らねぇのかなぁって思った自分がいた。言葉の要らない愛には、ある程度の信頼関係が必要だと思うんだが。信頼を築くためには、ゆっくりと一緒に歩んでいく時間が必要なわけで、ああ、だから船か。となる。俺は、確かめないと不安っていうのに、今まですごく囚われていた。今の好きな子に出会って、それが変わりつつある。んで、曲を聴いて。ああ、俺はこれになりたいんだと思った。

好きな子とどうなりたいかっていったら、きっとこういう関係だ。
信頼しあっているから、きっと愛をわざわざ確かめたり、不安になったりする必要がないんじゃないかな。
そういう関係になれるのであれば、それはとても心満たされることだよな。とても幸せなことだな。そう思った。
信じているからこそ、今日も一日自分の事を頑張ろうと、いまはすごく思うんだ。
大好きだから、『好き』は言葉にしがちだが;

 不安に駆られて、また相手を傷つけそうになった時は、こうやってまた音楽を聴いたりして、こう思ったこと、こう考えたことを思い出せるといい。自分の好きな子が、俺をぽい捨てするような子じゃないことを思い出すきっかけになればいいなと思ったり。

 っとまあ、勝手に妄想して。勝手に結論がでた。それだけの話なんだけれど。とてもいい曲なので、是非聞いてほしい。お勧めする。

100均で見つけた。絵がうまくなるブック。

 用事があって、100円均一ダイソーさんに行った。
 一日10分で絵がうまくなるブックを発見する。

 内容をペラペラとみて。これは面白い!と思った。

 イラストお題が64個あって、かくスペースもなかなか広めに開いている。ああ、これは楽しいな。
お題の物をかいてゆくシステムなので、今までに無意識にかかないで来たものに挑戦することも可能だなぁ。ああ、新鮮。もちろん、購入してきた。もう一つ、面白いものを見つけたのだけれど。日常がそこそこ忙しいため、両立は難しかろう。このブックが終わったら着手しよう。ということで、こちらを買ってきた。

時間は、自分のイラストの特性上、30分いただくことにした。いつものイラストと、おおむね同じぐらいだ。

フォロワーさんが、みんなで同じブックをやって、見せ合うのも絶対楽しいよねって話をしていたのだが、もう発想が素晴らしい。一緒にやってくれる人がいたら、めっちゃ楽しいのだろうな。

とりあえず、お題のカメをかく動画を張り付けておく。かわいいカメの隣にリアル系なカメは、かなりシュールな光景である。ああ、楽しい。

youtu.be

忘れていたことを思い出した話

俺のこれまでの人生を振り返ると、相当な転職人生を送っている。
転職してきた中で、一番精神的にきつかった職場の事を先日のきっかけがあるまですっかり忘れていた。正直なかったものにしていたし、本当に先日までそこでどんな状況だったぽっかり忘れていた。

とある会社で、二年ほど事務員をしていた期間がある。
手短に話すと、上司に『給料泥棒』とか『使えないとか』結構頻繁に言われ続けていたのだ。
少し前に、自分のこの自信のなさやか『自分いらない』っていう気持ちが、どこから来ているんだろうかということを深く考えたのだが。その時は、全ての要因は実家を離れるまでにあると思っていたのだが、他にも要因があったんだなぁと思いはじめた。歪んだことを繰り返す要因は、複雑に絡み合っている。
 こんなに頻繁に言われるということは、俺に非がきっとあるのだ。そう思っていた。いつまでもそういわれるのは嫌だから、もちろん教わったことはメモしていたし。なるべく、なるべく、早め早めに。書類を作っておいたり。入力したり。していたはずなんだ。それでも、俺に足りないところがあるから。俺が使えないから。『給料泥棒』って言われるんだなって、そんな感じで思考がぐるぐる回っていた。
 仕事に毎日行きたくなかった。でも、行った。そりゃ、行くしかないしやるしかない。仕事だから。

 俺の上司は、Aをやっといてって言っておいて、完成品を持っていくと『Bって言ったでしょ!何わけわからんことしてるの?』なんて、、、そういうことを言う人だった。
 事務所に二人だけの時に俺に聞こえるように『給料泥棒』とか『履歴書詐欺じゃないの?』とか、『使えない』とか、いう人だった。

 俺、使えないんだよなぁ。俺、要らないんだよなぁ。俺、必要ないんだよなぁ。誰にも必要ないんだなぁ。

そういうものが、慢性的にぐるぐるしていて。会社だけじゃなくて、いろんなものが、俺なんかいらないって言っているような気がしてならなかった。

 結局、俺に非があるから頑張らんと。なおさないと。そうやって2年続けたわけだが、俺はそこじゃずっと使えないままだった。要らないんなら、ここにいても迷惑になるだけだよな。そう思って辞表を出した。
 引き留められた。わけわからんかった。

 辞めてよかった。次の職場では、そんなこと言われなかったし。あっちこっち、手伝って!と呼ばれて、手伝うと、ありがとう!と言ってくれる人ばっかだった。それでも、頭のどこかで『俺は使えない』『俺は要らない』それらが、ずっともやもやぐるぐるしていた。そのもやもやは、『ありがとうって言ってくれるけど、きっとどこかで俺の事なんか要らないって思っている』と、妄想で敵を作り始めた。もともと、そういう気質はあったのかもしれない。母親の再婚。隊での、上官からの嫌がらせ。確かにこれらも立派な要因だ。だが、きっと。俺にとどめを刺したのは、この会社だったんだな。思い出して、なんだか腑に落ちた。

 先日この職場の人間にばったりと出会ってしまうまで、これをすっかり忘れてて。何を言われてやめたとか、どんな気持ちだったかとか。さっぱり忘れていて。でも、唐突に思い出して。その日の夜はボロボロ泣いた。俺は嫌だったんだ。使えないって言われるの、いやだったんだ。結構、しんどかったんだ。

 俺、いま普通に役に立ってるし。何より、俺がやりたいことを俺のためにしてくれている。俺が俺にけっこう満足している。だから、思い出したところで、もうもやもやしていた頃には戻ってやんないのだが…。
 
『自分はできない』『自分はいらない』こういう思考に陥ってしまうと、なかなか抜け出せない。そして、自分で自分の可能性を潰してしまったり、優しい誰かを敵に仕立て上げてしまったりすることがあるから。『お前はできない』なんて刷り込んでくる人間がいるのならば、早く離れてしまえって、俺は思う。
 やろうとする努力は必要だと思う。ただ、人間なんだから。向き不向きがあるのは、当たり前のことだ。完璧じゃなくったっていいんだ。今、そう思えるような思考に切り替わって本当に良かったと思っている。
 俺の思考をどうにかしてくれた人には、感謝しかない。

 そして、もし誰か同じようなことで苦しんでいたら。完璧じゃなくていい。みんな完璧じゃない。向き不向きはあるかもしれないが、考えてみればできることは沢山ある。あなたにしかできないことがある。
『あなたならできる』
 ただただ、そう、伝えたい。

同期が体験した怖い話『誰かいる?』

昔、同期と俺が体験した不思議な話をしようと思う。
最近ネタが、怖い話ばかりで申し訳ないが、なんか『とりあえずこれ書いとけ』って気がするので、書かせていただく。

昔、俺と同期が8階建ての宿舎に住んでいた時の話だ。夏だしさ。暑いしさ。ただでさえ、くそみたいに毎日走るしさ。そのうえ、教育中だから俺らはエレベータ使えねぇしさ。毎朝、毎晩。建物の外で整列点呼があるわけなんだけど。8階からダッシュで降りて、地上から8階までダッシュで登っていた。今考えると、よくそんなことやってたな俺。若かったなあの頃…。みたいな。この宿舎の事を、思い出すと一番最初にこれらを思い出す。

話は脱線してしまったが、そんなところに住んでいた。この建物の8階のドアにはロックがかかっていて、女性しか入れない仕様になっていた。

俺の同期が、休日に家族に電話をしに行った時の事である。彼女は俺のベッドバディで、彼女は2段ベットの下に。俺は2段ベットの上に住んでいた。ちょっと電話してくるわぁーっと、彼女は8階の一番端の廊下の窓辺にむかった。なぜ部屋で電話しないかって?これまた不思議な話なんだが、この建物非常に電波のつながりが悪い。なので、部屋の中で電話をかけても基本的にはつながらないのだ。
 俺はのんびり本を読んでいた。しばらくして、廊下をめっちゃ走る音が聞こえたと思ったら、同期がドアをばん!っと開けて、ベットに戻ってきた。
『ちょ!きいて!聞いてよ!タカちゃん!もう、すごい怖いんだけど!』
 
いつも落ち着いている彼女がものすごいテンションでしゃべるから、聞いてあげることにした。

 先ほども言ったように、彼女は廊下の端っこの窓辺に電話をしに行った。いつものように窓を開けて、窓の外に顔と携帯を乗り出すようにして電話していた。相手は、彼女の母親だったそうな。要件を話し終えて、少し雑談をしていたところで彼女の母が言った。

『あんた、周りに誰かいるの?』
『いないよ?なんで?』

彼女の周りには誰もいなかった。

『さっきから、あぁーあぁーーーって、男の人の声がするのよ。』

彼女の背筋は凍り付いた。ぞくぞくして、即効電話を切って俺の所に来たらしい。
先ほども言ったように、この階に男がいるのはあり得ない。
じゃあ、その声って何だったのだろう。

それを考えたときに、ふっと思い出したことがある。夜中、暑すぎて俺がベットに寝ないで床に突っ伏して寝ていた時の話しだ。いや、真面目に床。床の冷たさ最高。
 くそ暑い中でも、床のひんやりした冷たさで結構ぐっすり寝ていたのだけれど、その日は人の気配で目が覚めたんだ。この時代は24時間腕時計を付けておくのが当たり前だった(寝る時も、風呂の時も…)ので、起きた瞬間腕につけていた時計に目をやった。大体、3時ぐらいだったかな。巡回の教官か、勤務の都合で夜間に戻ってきた隊員かと思っていた。これに関しては、本当に巡回していた教官かもしれないし、隊員かもしれないのだけれど。とっても記憶に残っているので、実はなにかだったのかもしれない。

結局、声の主のことは教育が終わっても解らなかった。ただ、不思議なことがもう一つ。これは、俺と彼女。そして、その他同期も確認している。私物を集積していた部屋がある。俺たちは、日ごろ使う日用品の他に、段ボール一個分の私物を持てることになっていて、その段ボールをとある部屋に集積していた。
 休みの日に度々荷物を取り出しに、部屋にいっていた。その時は何も異変に気が付かなかったのだが…。配属先がきまり、移動する。私物箱を手元に置いておくために、最後にその部屋に入ると、壁にところどころ黒い煤の汚れみたいなのが付いている。なんだこれ…と思って。よく見たら、黒い手形なんだ。天井のベットを登っても届かないあたりに、多くついていて。ぎゃあ、ぎゃあ言いながら、私物箱取り出したっけ…。

 8階に住んでいたのは、いったい何者だったのだろうか…。
 オバケとか、俺は見えないから。実際、手形を見たり、気配しか掴めなかったり…信憑性にはかけるのだけれど。
 なんか、そういう建物多いんだよなぁ。あそこは。

先輩から聞いた怖い話『水の話』

昔の話である。夜中に演習場の天幕の中で先輩から聞いた話をしよう。

この先輩は、重機や車両等の整備員として職務に従事していた。ある時仕事で、とある島にしばらく勤務するようにというお達しをうけた先輩。上官と後輩と共にその島にたどり着くと、島の居住地の中を現地の隊員が案内してくれたそうだ。先輩たちは、荷物を置くために宿舎の一室に通された。話を聞くと、普段使用されている部屋が他の隊員が入っていていっぱいなので、申し訳ないが2日だけこの部屋を使ってほしいとのことだった。こういうことは、どこの駐屯地でもよくある事だから、先輩たちは大してそんなこと気にしていなかった。
 部屋に通された先輩は、違和感を感じた。昼間なのに、その部屋の窓は分厚いカーテンで覆われているのだ。そして、中央に置かれたテーブルの上に、不自然に置かれた満水の透明のコップが一つ。
 
 『この部屋を使う上で注意事項があります。』
 先輩が荷物を整理していると、上官と話を終えた隊員が全員に聞こえるように話し始めた。

『1つ、カーテンは昼間でも絶対開けてはいけません。2つ、コップの水は朝になったら必ず満水にしてください。』

 この二つを注意事項であると周知して、隊員は去っていった。
先輩の上官は、この部屋に泊まったことがあるらしく。部屋のルールを既に知っているようだった。この部屋、いわゆるいわくつきの部屋らしく、昔からここに泊まる時はこのルールを厳守するように申し送りされるらしい。
 
なんでこんなルールになったのだろうか?

 その夜先輩は、その部屋の一番ドアに近いベッドで眠っていた。夜中に、酷く喉が渇いて目を覚ました先輩は、コツコツコツと半長靴で廊下を歩く音を聞いた。コツコツコツという音はどんどん部屋に近づいてくる。夜間の見回りの隊員か、お手洗いに起きた隊員だろうと思ったが、その音は自分たちの部屋の前まで来るとぴたりとやんでしまった。先輩は、怖くなって布団を頭からかぶって丸まったらしい。そしたらいつの間にか寝ていたといっていた。

 朝、起きると不思議なことが起きていた。中央のテーブルの上に置かれていたコップの水が空になっていたのだ。ああ、喉が渇いていたんだな…。先輩は漠然とそう思ったという。

 起きて、上官や後輩に夜中に水を飲んだんじゃないか?ときいたが、誰も飲んでいないという。もちろん、自分だって飲んでいない。

じゃあ、一体だれが…。

 夜中の足音と、水がなくなる現象はその次の日も起こったそうな。二日たって、別の部屋にうつったときに先輩は、とてもほっとしたらしい。

 先輩が、元の部隊に復帰してから。その真相を、別の先輩からきかされることになる。詳しい詳細は話さないでおくが、すごく要約すると、その島でかつて争いが起こった時代、この島で息絶えた人間が、水も飲めずに死んでいったのだという。だから、いつでも水が飲めるように、要所要所に水を置いておくのだそうな。

 先輩は酒を片手につまみを食いながら話していたので眉唾もので聞いていたが、後日別の隊員から似たような話を聞いたのでこの話はあながち嘘ではないのかもしれない。
 この頃、自分もいろんな駐屯地や宿舎を転々としていたが、ぞっとする体験はそこそこしていると思うので、こういうことがあっても不思議じゃないなと思うのだ。

 異常なことも、毎日起こると通常になってしまう世の中だ。
 異常も通常も、本当は変わらないところに存在しているのかも知れない。