駄犬、家を買う

一度人生投げた俺が居場所を手に入れるまでの話

同期が体験した怖い話『誰かいる?』

昔、同期と俺が体験した不思議な話をしようと思う。
最近ネタが、怖い話ばかりで申し訳ないが、なんか『とりあえずこれ書いとけ』って気がするので、書かせていただく。

昔、俺と同期が8階建ての宿舎に住んでいた時の話だ。夏だしさ。暑いしさ。ただでさえ、くそみたいに毎日走るしさ。そのうえ、教育中だから俺らはエレベータ使えねぇしさ。毎朝、毎晩。建物の外で整列点呼があるわけなんだけど。8階からダッシュで降りて、地上から8階までダッシュで登っていた。今考えると、よくそんなことやってたな俺。若かったなあの頃…。みたいな。この宿舎の事を、思い出すと一番最初にこれらを思い出す。

話は脱線してしまったが、そんなところに住んでいた。この建物の8階のドアにはロックがかかっていて、女性しか入れない仕様になっていた。

俺の同期が、休日に家族に電話をしに行った時の事である。彼女は俺のベッドバディで、彼女は2段ベットの下に。俺は2段ベットの上に住んでいた。ちょっと電話してくるわぁーっと、彼女は8階の一番端の廊下の窓辺にむかった。なぜ部屋で電話しないかって?これまた不思議な話なんだが、この建物非常に電波のつながりが悪い。なので、部屋の中で電話をかけても基本的にはつながらないのだ。
 俺はのんびり本を読んでいた。しばらくして、廊下をめっちゃ走る音が聞こえたと思ったら、同期がドアをばん!っと開けて、ベットに戻ってきた。
『ちょ!きいて!聞いてよ!タカちゃん!もう、すごい怖いんだけど!』
 
いつも落ち着いている彼女がものすごいテンションでしゃべるから、聞いてあげることにした。

 先ほども言ったように、彼女は廊下の端っこの窓辺に電話をしに行った。いつものように窓を開けて、窓の外に顔と携帯を乗り出すようにして電話していた。相手は、彼女の母親だったそうな。要件を話し終えて、少し雑談をしていたところで彼女の母が言った。

『あんた、周りに誰かいるの?』
『いないよ?なんで?』

彼女の周りには誰もいなかった。

『さっきから、あぁーあぁーーーって、男の人の声がするのよ。』

彼女の背筋は凍り付いた。ぞくぞくして、即効電話を切って俺の所に来たらしい。
先ほども言ったように、この階に男がいるのはあり得ない。
じゃあ、その声って何だったのだろう。

それを考えたときに、ふっと思い出したことがある。夜中、暑すぎて俺がベットに寝ないで床に突っ伏して寝ていた時の話しだ。いや、真面目に床。床の冷たさ最高。
 くそ暑い中でも、床のひんやりした冷たさで結構ぐっすり寝ていたのだけれど、その日は人の気配で目が覚めたんだ。この時代は24時間腕時計を付けておくのが当たり前だった(寝る時も、風呂の時も…)ので、起きた瞬間腕につけていた時計に目をやった。大体、3時ぐらいだったかな。巡回の教官か、勤務の都合で夜間に戻ってきた隊員かと思っていた。これに関しては、本当に巡回していた教官かもしれないし、隊員かもしれないのだけれど。とっても記憶に残っているので、実はなにかだったのかもしれない。

結局、声の主のことは教育が終わっても解らなかった。ただ、不思議なことがもう一つ。これは、俺と彼女。そして、その他同期も確認している。私物を集積していた部屋がある。俺たちは、日ごろ使う日用品の他に、段ボール一個分の私物を持てることになっていて、その段ボールをとある部屋に集積していた。
 休みの日に度々荷物を取り出しに、部屋にいっていた。その時は何も異変に気が付かなかったのだが…。配属先がきまり、移動する。私物箱を手元に置いておくために、最後にその部屋に入ると、壁にところどころ黒い煤の汚れみたいなのが付いている。なんだこれ…と思って。よく見たら、黒い手形なんだ。天井のベットを登っても届かないあたりに、多くついていて。ぎゃあ、ぎゃあ言いながら、私物箱取り出したっけ…。

 8階に住んでいたのは、いったい何者だったのだろうか…。
 オバケとか、俺は見えないから。実際、手形を見たり、気配しか掴めなかったり…信憑性にはかけるのだけれど。
 なんか、そういう建物多いんだよなぁ。あそこは。