駄犬、家を買う

一度人生投げた俺が居場所を手に入れるまでの話

落ちのない怖い話『牛丼屋』

某牛丼屋に牛丼を買いに行った時のことだ。
牛丼を数人分テイクアウトするべく、俺は店内に入っていった。テイクアウト専用のレジにて、牛丼を注文し、お金を支払った。『少々かけてお待ちくださいね。』従業員のお姉さんが、ニコニコといった。ここのお姉さん、とてもいいひとそうなので好きだった。今はあんまり見かけない。まあ、昼間に行くことが少なくなったからな。時間が合わないだけかもしれない。

お姉さんに言われた俺は、椅子に座った。牛丼が出来上がるまで携帯の画面をぼんやり眺めながら、椅子に座っていた。

ーカランー

ーコン…コン…コンー

何か、硬いものが床に落ちて転がるような音がしたので、びっくりしてそちらを見た。すると、床に水が入っていたプラスチックのコップが一つ…。
 食べ終わったお客さんは少し前に出ていって、そこには俺とお姉さんと厨房の方にもう一人いるだけだったので、それにお姉さん忙しそうだったので、俺はコップを拾いに向かった。
 俺がコップを拾って机の上に戻すと、お姉さんが『すいません!』っといって、慌てて出てきた。

コロナウイルスの流行前の話なので、窓やドアが換気のために開いていたということはなかったし、席の方には俺以外誰もいなかった。おかしなことに、コップが床に落ちる要因が見つからないのだ。

俺は椅子に戻って、なんで落ちたのかを考えたが、原因は思いつかなかった。

しばらくして、牛丼が出来上がったようでお姉さんに呼ばれた。
『先ほどはありがとうございました;』
『いえいえ』
『…たまに、落っこちるんですよね;』

 お姉さんは牛丼の入った袋を俺に渡しながらそう言った。『そうなんですか;』どう返していいかわからなくて、しょうもない返事をしてしまったが。
 どうやら、誰も居ないのにコップが落ちることはよくあるようだった。

 そのまま、牛丼をもらって帰って…その後コップが落ちる現象がどうなったかわからないので、この話には落ちがない。

 この話をかいていて思い出したことがある。そういえば…俺が居酒屋の厨房でバイトしていた時も似たようなことがあったんだよな…。その話は、また今度することにしようと思う。